(3)「神話に残るGHQ文書」

 50数年前のGHQ社会科教科書の検閲文書の中に、「『古事記』や『日本書紀』にまとめられた神話は、天皇と朝廷がこの国を支配するいわれを説明するための物語である」と述べられているが、それが50数年後の左の教科書(日本書籍・中学)にそのまま記載されている。

 他にも「朝廷では、皇室や貴族などに伝えられていた神話や伝承・記録などを、天皇を中心とした国の成り立ちとしてまとめなおし、『古事記』や『日本書紀』をつくった」(清水書院・中学)と書かれている。『とりわけ日本書籍が見開き2ページを使って、「ダーウィンの進化論」と「神様からはじまる人間の歴史」(その具体的な例として『旧約聖書』の「創世記」と戦前の日本の小学校歴史教科書『初等科国史』の記紀神話を並べて引用)を比較させ、進化論に軍配をあげ、生徒が神話を否定的に受け止めるように誘導しているのは問題である。』(「中学社会科・教科書の通信簿」@神話 高橋史朗教授 産経新聞社)。神話は、古代の日本人の生活様式、文化、信仰、ものの考え方を唯一記した重要な記録である。決して教科書の記述に見るような、天皇支配の正当性を押しつけるためだけのものとして存在してはいない。ほとんどの教科書が上記のような記述に終始している。ここまで見てきただけでも、あのセンター試験・日本史の設問に行き着くことが分かる。教科書が大きな目標に掲げているものが何か。ああ、恐くて言えない。でも実は教科書問題は簡単なのだ。

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