2)日本を取り巻く危機

 あるアメリカ人は、村山総理がアジア諸国を謝罪して歩いている事を聞いて、「なんで日本が50年も前のことを、いまさら謝っているのか理解できない」と言った。(同様の言は、謝罪されたアジアの首脳からも出ている。)そもそも村山(社会党)内閣ができたのは、平成5年、一部の自民党議員が党を割って新進党を結成し、その為自民党が下野したからである。返り咲きを狙った自民党は、社会党と手を組むという離れ業をやった。社会党は、与党になったとたん自衛隊、安保を容認せざるを得なくなり、革新政党としての性格を埋没しかかった。その為、何とか社会党の独自色を出したくて、おりしも戦後50年にあたり、「謝罪と補償をする」かのように受け取れる愚かな政策を打ち出した。自民党は、社会党に政権離脱されては困るのでこの要求を飲まざるを得なかった。

 これが、戦後はすでに終わったと思っていた人達にまで、金銭的欲望の火をつけてしまった。現在では、アジア諸国だけではなく欧米諸国からも戦後補償を要求される事態に至っている。特に平成11年(1999年)7月、アメリカ、カリフォルニア州議会で、「第二次大戦中の強制労働について2010年まで損害賠償の請求ができる」と定める法案が成立した。これに基づいて、現在、日本企業をターゲットにした損害賠償訴訟が次々と準備されている。戦後50年以上たって、どうしていまさらこのような法案がカリフォルニア州議会で成立したかと言うと、法案成立の背景には、国際的な中国人の組織が、南京虐殺に基づく日本の非道を根拠に世界各国に働きかけているからだと言う。欧米諸国からの、「戦時中の捕虜に対する強制労働」に基づく日本企業への損害賠償請求額は、100兆円を超えると言う試算もある。このままでは、日本経済はますます衰退するであろう。少なくとも更なる不況とリストラの為、新たな犠牲者が多数出る日は遠くないかもしれない。

 「何を馬鹿な」と思われるかもしれないが、アメリカを甘く見るのは間違いである。マクドナルドのコーヒーが、ドライブスルーでこぼれただけで、賠償金1億円の判決が下る国である。物事は、自分を基準に考えていると大変な墓穴を掘る。しかも原告の裏には、以前同様の補償を起こすことで多数のドイツ系企業から多額の「和解金」をせしめた訴訟のプロがついている。アメリカは日本の想像を絶する訴訟社会であり、訴訟で金儲けを考える者が多数いるから厄介なのだ。

 しかし、これは「訴えていただければ、なんらかの補償を検討します」のようなことを言った日本政府が自ら掘った墓穴である。謝れば謝るほど、無制限に要求が突きつけられ、もはや日本は片足を底無し沼に踏み入れたと言ってよい。逆に日本は、戦時中外国から受けた日本兵捕虜に対する虐待や、民間人の大量虐殺に対し、欧米諸国に何ら謝罪も補償も求めていない。この仕組みは、教科書問題の根幹であるから後で説明する。

 政治家は、あてにならない。もとはと言えば、「社会党」が独自色を出すために、全国民の利益が犠牲にされたのである。社会党は、今や国民に見放され見る影もないが、彼らの残した禍根は、長く日本国民を苦しめるだろう。彼ら政治家は、以下の理由で日本国の政治家としての資格が無い。

1.自分の国、および日本国民を本気で護ろうという決意が無い。

2. 歴史に関する無知。筆者はこの件で、「無知は罪悪」だと知った。

3. 国際感覚、ないしは国際的な経験の欠如。言いかえれば、世界の荒波にもまれていない「井の中の蛙」である。井の中の蛙であるが故に、井の中の常識でしか物が考えられない。それは昨日まで、「周囲の状況が時代と共にどんなに変化しても目をつぶり、平和憲法にさえすがっていれば、平和でいられる」と盲信する人達が、急に責任ある立場になってしまったためであり、幾分かは同情の余地もある。むしろ党利党略で動いた一部の保守政治家こそ、もっと「国民の利益」を守ることに視野を向けるべきだったのではないか?

3)「歴史認識を共有する」と言うことの危うさ

 立場が違えば、ものの見え方が変わるのは当たり前である。例えば西部劇では、白人はヒーローであり正義の開拓者、インデアンは残酷で非文明的であり、最後にはコテンコテンにやられる悪者である。しかし、これは白人から見た歴史観に過ぎず、インデアンの側から見れば、白人は先祖伝来の土地を奪いに来た侵略者である。ヒーローでも正義でも何でもない。立場が違えば見方が違うのは、むしろ当たり前のことである。しかし、お互いの主義主張が異なることを認識しつつも互いに尊重しあう、あるいは礼節をもってお付き合いすることは充分可能である。中国や韓国が、「歴史認識を共有せよ」と言う意味は、彼らと日本がお互いに譲り合って共通の歴史認識を「新たに作る」訳ではなく、日本が100%譲歩して彼らの歴史認識を受け入れ、彼らに服従することに他ならない。その目的は、言わなくてもお分かりであろう。

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